タイトル

逝年

本

石田衣良

◆あらすじ◆
少年が自分にしか出来ない仕事をする

●感想

 娼年の続き。娼年とは娼婦の男版です。主人公は大学生のリョウ。娼年でスカウトされてその世界に入り、逝年ではプレイングオーナーになります。前半はクラブ再建の話を。後半は創始者である御堂静香の最期の話。性と生を描いた石田衣良ならではの作品です。
 石田衣良の作風といえば都会的でお洒落。今回の舞台も東京でクラブの事務所は代官山。食事は大体ホテルのレストランとか代官山のバーで居酒屋のシーンなんか全然ありません。来ている服もブランド物ばかりでユニクロやGUなんて言葉は出てきません。作品の雰囲気作りを徹底しています。ただ決して嫌味臭くはありません。それは多分本当は都会的でない部分も書けると知っているからでしょう。池袋ウエストゲートパークなんかはそっちの側面が色濃く出ています。
 主人公たちは男娼という仕事を通じて様々な価値観に遭遇します。ここに入れる何よりの資質は「違うことを受け入れられる」ことでしょう。自分の価値観でしか相手を計れないようでは絶対に上手くいきません。ここのクラブにはあらゆる欲求を抱えた人が連絡してくるからです。
 違うことを受け入れる、ことは案外難しく、人は成長するにしたがって自分の中にモノサシを作ります。大人が簡単に変われないのはおそらくこれが原因でしょう。なまじ成功している人だと余計にそのはずです。自分の中の成功体験が石より硬いモノサシを作ってしまいます。クラブの新しいメンバーでアユムという青年が出てきます。彼は身体が女で心は男。そんな彼を父親は受け入れることが出来ません。女性として生きて、子供を産んでほしいと願っているのです。自分も父親と同じ立場だったらそう願うかもしれません。普通であって欲しい、と。ただ、父親の「普通」に息子は耐えられません。それを押し付けられてずっと辛い思いをしてきました。この辛いは「男として生きられなくて辛い」と「父親に理解してもらえなくて辛い」と少なくとも2つの意味で辛かったことが想像出来ます。この親子がどういう結末を迎えるかは読んで確認してください。
 性的描写が多いですがエグくはないので苦手な人でも大丈夫です(多分)。泥臭い小説よりも、綺麗でファッショナブルな小説が好きという方にお薦めしたいです。人の価値観の多様さを学んでください。

【名言】

相手の幸福が自分にとって不可欠な状態を愛という



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