タイトル

虚夢

本

薬丸岳

◆あらすじ◆
娘を殺した犯人が社会に帰ってきた

●感想

 初めて読む作者の本です。タイトルに惹かれ、あらすじを読んで読むことに決めました。もう少し詳しくあらすじを話すと、ある夫婦の娘が通り魔に殺された。その通り魔は統合失調症であり責任能力がないと判断され起訴されなかった。苦しみにあえぐ殺された娘の母親は精神を病み夫婦は離婚してしまう。離婚して数年後、久しぶりに別れた妻から連絡がきた。そしてその内容は娘を殺したあの男を見たというものだったのだ。
 この数年後とは物語では4年後です。この通り魔は三上夫妻の娘の他に複数人を殺害しました。真昼間の公園でです。それなのに4年後には社会復帰し、遺族の方とすれ違うくらい近くにいます。恐ろしいですね。これは刑法39条によるものだそうです。この法は簡単に言うと精神疾患が認められた者には責任能力がないと判断し刑が軽くなるというもの。判断は精神科医に委ねられています。こんなの本当に見極められるのでしょうか。演技していないとは言い切れるのでしょうか。実際、ある医者は疾患があると判断しても別の医者は疾患がないと判断することもあるそうです。もし演技が成功し罪を免れたら、遺族たちの思いは控えめに言ってあまりにやりきれませんね。
 日本では私刑が禁じられています。罪を裁くのは法であり個人ではありません。でももしも罪に対しての罰があまりに軽すぎたら、被害者の家族はどう思うでしょうか。何かで読んだことがあります「法が完璧であるはずがない。法を作った人間が完璧じゃないからだ」と。その完璧じゃない法に従わなければならないのです。二度と取り戻せないものを奪われた時、大人しく従うことなどできるでしょうか。自分の人生を犠牲にしても私刑を果たす、という人がいたとしても至極自然なように思います。
 その原動力は突き詰めれば「愛」なんだと思います。これが強烈な復讐心となり加害者を襲うのでしょう。ダンブルドアは愛の力を非常に大きいと見ていました。ヴォルデモートはその逆で軽視していました。結果ヴォルデモートは敗れました。これを見ても愛の力は偉大だとわかります。愛は偉大ですが人を狂わせることもあります。私刑を果たした人は国的に見れば罪人ですが、それを責められる人はいないように思います。少なくとも私には責められません。まったく救われない話です。

刑法三十九条

 心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を軽減する



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