タイトル

64 -上下-

本 本

横山秀夫

◆あらすじ◆
時効目前の事件を追う

●感想

 今何かと話題の作品です。タイトルの由来は昭和64年から。横山秀夫作は初めてだな〜なんて思ってたらちゃっかり前にも読んだことありました。それは短編小説だったから、長編小説は初めてです。どうやらこの作家も警察小説がメインフィールドのよう。
 今作の主役は警務部に所属の広報官。主な役割はマスコミとの折衝。警察の花形である刑事とは水と油ような関係。主人公はそんな水と油の関係である刑事部から異動でやってきた・三上。サッカーで例えるならバルサからレアルに移籍したようなものでしょうか。
 メインストーリーは三上の広報官としての苦悩とD県警最大の未解決事件、通称「64」。この2つが話の根幹を成しています。三上の苦悩は広報官の仕事に徹しきれないことでした。自分は刑事だ、その自負が強すぎていまいち広報官の仕事に情熱を持つことが出来ませんでした。そのためか部下との間にも溝があり、ますます悩みは増えるという悪循環の中にいました。ですがとある事件がきっかけに決断が迫られます。お前は「刑事」か「広報官」か、この問いに対する三上の答えはいかに。これが1つの側面です。
 もう1つは未解決事件「64」。事件は昭和64年自営業を営む雨宮芳男の娘・祥子が誘拐されたことから始まる。未解決事件と歌っているように犯人を逮捕することができず、祥子ちゃんは死体で発見された。被害者はもちろん他にもこの事件は多くの犠牲者を生みました。欺瞞に対する代償はあまりにも大きく、正義に対する組織の論理は無常でした。時効目前のこの事件がどういう結末を迎えるのか。是非読んで確かめてください。
 刑事にはエースというものがいるらしい。そのエースの求心力は絶大で検挙率にも大きく関わってくるのでしょう。今作でその役を担うのは参事官の松岡。刑事時代の三上の上司であり現刑事部のエース。事件から14年も経てば熱意も風化してしまうかと思いきやエースは違います、それを感じさせる一言がこれ。「俺はな、初めて会う人間すべてに目で問い掛けることにしているーお前はロクヨンのホシか?」この言葉に達する頃には警察に対する不信が募っているはずです。ですがこの一言で見直そうという気になると思います。いややっぱりこの人が特別なだけかもしませんが。
 話題になるだけあって壮大な話です。主人公が広報官というのも珍しいですが、それがこの小説を特異なものに昇華しているのかもしれません。広報官という仕事とプライベートな問題。単純な事件解決の話ではなく、人の苦悩を味わえる小説に仕上がっているのはおそらくこれのおかげです。

【名言】

外道に正道を説けるのは外道



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